原状回復費用のトラブル解決方法
以前より賃貸物件から退去する際に発生する原状回復を巡ってトラブルになることは多く、1998年に国土交通省によりガイドラインが策定され、2020年には民法が改正され、原状回復について法的な枠組みが変わりました。
とは言え、契約日時により改正前の民法が適応になることもあり、まだまだ原状回復費用のトラブルは多いのが実情です。
また、事業用物件を含め賃貸借契約書や特約の内容が重視される点も見逃せません。
原状回復費用でトラブルがあるとき、どのように解決していけば良いかご案内いたします。
原状回復費用に払わなくていいものが含まれていることがある
原状回復について詳しくないと、本来支払う必要のない費用が含まれていても支払ってしまうことがあります。
次の手順で確認してみましょう。
1.原状回復費用の内訳を確認します。
内訳と賃貸借契約書、特約を照らし合わせて、どれがどれにあたるか一つずつ確認することがポイントです。
2.耐用年数をチェックします。
耐用年数により原状回復費用の負担割合が変わるからです。
例えば、国土交通省のガイドラインではクロスの耐用年数を6年としています。
ただしオフィスなど事業用物件の場合、耐用年数に関係なく入居者の負担でクロスを貼り替える契約になっていることが一般的です。
3.費用が相場から逸脱していないか確認しましょう。
事業用物件をオフィスとして使用していた際の原状回復で指定業者にしか工事を発注できない場合、市場価格よりも高額になっていることがほとんどです。
相場を見極める方法としては、2通りあります。
別の工事業者に見積もりだけを依頼する方法は、業者変更ができないこともあり、あくまで参考にしかならないことが多いです。。
専門の業者に依頼して相場を確認してもらう方法なら、相場の確認が目的であることを理解しているので、対外的にも精神的にも楽だと思われます。
もし、払う必要のないものや納得いかないものが含まれていたら、協議を行い原状回復費用を適正なものにするようにしましょう。
退去立ち会いがトラブルを防ぐポイント
居住用であっても事業用であっても退去立ち会いの際、敷金や保証金などの返金や原状回復費用の負担について、具体的な金額や日程について書面で交わしておくことが重要です。
具体的な日時を確認し記録に残すことで、原状回復費用の清算や敷金、保証金の返金が遅くなるトラブルを防げます。
オフィス物件の場合、退去前に原状回復工事を行うのが一般的ですが、退去時に追加で原状回復が必要だと指摘されるケースがごく稀にあります。指摘されたときは口約束にせず、何を工事するのか客観的に見てわかるように写真などを添えた記録を残しておくことが重要です。
ハウスクリーニング費用
原状回復費用を巡るトラブルで多いクリーニング費用について見ていきましょう。
居住用賃貸物件に多い退去時のハウスクリーニングの特約ですが、通常損耗(一般的な使い方をしていたら損耗する部分)として扱うのが基本です。
入居者が通常の清掃を実施している場合、ハウスクリーニングは賃貸人(大家さん)の負担と国土交通省のガイドラインに示されています。
このため、ハウスクリーニングを借主(入居者)負担とする場合は明確な合意が必要になります。
明確な合意というのは、単に賃貸借契約書や特約、重要事項説明書などに記載があるだけではダメで、借主(入居者)が退去時に負担するハウスクリーニング費用が具体的に書いてあり、妥当な金額であるであることが必要とされるようです。
ちなみに、居住用物件のハウスクリーニングは1平米あたり800~1,500円程度ですので、相場よりも高額な退去費用であった場合は交渉し削減できると考えられます。
事業用物件のハウスクリーニング
事業用物件の場合、ハウスクリーニングを含めた通常損耗も入居者負担とする契約が多く、通常はガイドラインの適応外とされるので注意が必要です。
まず、ハウスクリーニングは誰がいつ行うのか契約書で確認しましょう。
入居者が退去前にハウスクリーニングをするのか、退去し明け渡し後にビルオーナーがハウスクリーニングするのか明確でなければ、交渉する必要があります。
また金額面でも相場よりも高額であることもあるので、相場を確認しておくようにしましょう。
原状回復費用の消滅時効に注意!
原状回復費用について何もしていないと時効が発生してしまいますので、注意しましょう。
原状回復費用の消滅時効は、支払い先などで変わります。
原状回復の工事業者から請求される工事代金
工事が終了したときから5年で、工事業者から請求される報酬の権利は消滅します。(民法166条)
なお、2020年の改正民法前は工事の請求代金は3年(短期消滅時効)でした。(旧民法170条)
原状回復工事を貸主(ビルオーナー)が行い費用を借主(入居者)に請求するとき
貸主(ビルオーナー)が借主(入居者)に対し、原状回復費用の請求を一切していない状態であれば、明け渡しをしてから1年で消滅時効になります。(民法600条、622条)
裁判や裁判外で借主(入居者)に請求をしていれば、債権となり5年で消滅時効になります。(民法166条)
少しややこしいですが、原状回復費用の請求を明け渡しから1年以内にすれば、消滅時効は5年になるということです。
まとめ
原状回復費用についてトラブルが発生しており解決の糸口が見えないのであれば、最終的に不動産に詳しい弁護士に相談し裁判で決着をつけることになります。
弁護士に依頼することにしたとしても、お伝えしたポイントなどをチェックする必要がありますので、まずはチェックすることが大切です。
なお、株式会社JLAでは、事業用物件の原状回復のコンサルティングを行っており、工事業者から出された原状回復費用の見積もりが適正かどうか査定をしております。随時相談に応じておりますので、お気軽にお申し付けください。