オフィス・事務所移転時の
原状回復費削減ノウハウ
2020.11.17
コロナ禍における賃料減額交渉のポイント
新型コロナウイルスの感染拡大は緊急事態宣言、在宅ワークの拡大などにより、すべての業種、業態に影響を及ぼし、オフィスや店舗に入居する企業、個人事業主のテナントは、賃料減額を必然的に考える機会が増えてきています。
本記事では、コロナの影響を考えた借主側(オフィスや店舗を借りているテナント側)の視点で賃料減額交渉のポイントをお伝えします。
賃料減額は大きく2つに分けられる
賃料減額は新型コロナウイルスの影響により収益が減った理由により、期間を定めて賃料減額をする方法と、新型コロナウイルスが感染拡大する以前より行われてきた市場原理に基づいた近隣相場との比較や経年劣化により期間を定めずに賃料減額を行う方法の2つに分けられます。
どちらを行うにしても、賃貸借契約書に記載されている貸主(オーナー)との交渉が必要です。
賃料減額の交渉がしやすい環境
新型コロナウイルス対策として政府や国交省は賃料減額の交渉を促しているため、貸主(オーナー)が賃料減額の交渉に応じないということは考えにくい情勢になりました。
しかし、貸主(オーナー)から「賃料減額の交渉は一切行わない」といわれるケースがあるかもしれません。賃貸借契約書に賃料減額は一切行わないとする旨の文言があるかもしれません。
賃料減額の交渉のテーブルについてもらうためにも、該当する法律を確認しておきましょう。
- 民法611条1項(令和2年4月1日に改正施行されているため、賃貸借契約をした日によって適応される法令が異なります。ご注意ください。)
- 令和2年3月31日以前の契約が該当します(旧民法)
「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」 - 令和2年4月1日以降の契約が該当します(新民法)
「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」
- 令和2年3月31日以前の契約が該当します(旧民法)
- 借地借家法32条1項
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」
ポイントは、借地借家法32条1項にある「契約の条件にかかわらず」という部分です。
減額交渉したいが応じてくれない場合や契約書による縛りがあったとしても、交渉できる可能性があるかもしれません。
ただし、法をどのように解釈するか意見が分かれる部分もありますし、相手も人間ですから一方的に「法で定められているのだから、交渉しないといけない」と伝えて交渉を開始するのはNGです。
賃料減額は貸主(建物オーナー)、借主共にメリットがある
片方だけがメリットがある交渉は、間違いなく決裂します。
賃料減額はお互いにメリットがあることを理解してから、交渉することが大切です。
貸主側(オーナー)のメリット
コロナ禍でオフィスやテナントを移転、閉鎖される企業、個人事業主が増えています。
賃料減額に応じず、借主(テナント)に移転された場合、新たな借主(テナント)を探すのは難しい局面です。近隣相場が低下し、今までの金額では入居してくれないことも考えられます。
特に大型物件は、在宅ワークの拡大に伴うスモールオフィス化の流れがあるため、物件を小さく区切る工事をした上で、募集をかけないと借主(テナント)が現れない可能性があります。
借主(テナント)が倒産する最悪のケースでは、賃料の滞納、原状回復などデメリットを一身に受けてしまいます。
新型コロナウイルスの影響で期間を定めて賃料減額、猶予をした場合、所定の書面を残し手続きをすることで減免した賃料は損金として計上が可能であり、固定資産税、都市計画税が減免されるという通知が国土交通省から出されています。(通常、減免した賃料は寄付金になります)
また、賃料減額をした貸主(オーナー)に対して、地方自治体が助成制度を設けていることもあります。
借主側のメリット
賃料減額により、経費が削減でき資金繰りが楽になります。
逆に賃料減額ができず、オフィスや店舗を移転することになった場合、移転のお知らせを取引先に通知する手間や、パンフレット、ホームページなどに記載されている住所を変更する手間が必要になります。
コロナによる影響で期間を定める場合の落とし穴
実際にあった事例ですが、自然災害により借主の収益が極端に低下し、期間を定めて賃料を減額したケースがあります。
このケースでは賃料を減額する旨の契約書に期間終了後、「お互いが協議の上・・・」という文言があったため、自然災害前の賃料に戻す際にもめたそうです。
コロナによる賃料減額でも同様のトラブルが予想されます。貸主(オーナー)、借主(テナント)お互いの信頼関係を維持させるためにも、賃料減額交渉の専門家に入ってもらうことも考慮しましょう。
早めの行動が大切
賃料の支払い日になってから、ギリギリで貸主に「賃料を期日通りに支払えない」伝える方がいらっしゃいますが、正直、よろしくありません。
個人オーナーであれば、賃料をもとにしたローンの支払いがあり、即座の対応ができないかもしれませんし、オーナーが企業であったとしても、コロナ禍で運転資金に余裕が無くなっているかもしれません。
場合によっては粘り強い交渉が必要になることも
貸主に賃料減額交渉をしやすい環境ではありますが、法的義務が明確になっていない(解釈により変わる)こともあり、粘り強い交渉が必要になるケースも考えられます。
国や政府が後押ししていると伝え賃料減額交渉をしたものの、物別れに終わってしまうこともあり得るでしょう。
スマートな賃料減額交渉を実現するためにも、賃料改定コンサルティングをしているJLAに一度アポイントをとってみてはいかがでしょうか。