原状回復工事の退去費用平均は?費用低減のポイントは?
事業用、住居用の区分に関係なく退去する際は、原状回復が必要です。原状回復に必要な工事、クリーニングの費用が退去費用です。住居用の場合、原状回復は退去後に行われ敷金から差し引かれる(不足分は請求されます)ことが多く、事業用の場合は退去前に(契約期間内)に原状回復工事を行い工事完了後に退去となります。
まずは、退去費用の平均を確認し、次に退去費用の低減を図っていきましょう。
事業用物件の退去費用平均と相場
大きさ、設備、ビルの状態により大きく変わりますが、おおよそ下記の金額が退去費用の平均と相場です。
区分 | 平均費用(坪単価) |
小規模オフィス | 30,000~60,000円 |
中規模オフィス | 60,000~90,000円 |
大規模オフィス | 90,000~150,000円 |
但し、この退去費用は、原状回復工事内容や管理会社、建物オーナー、指定業者により、また入居時の内装により大きく異なるため、注意が必要です。一般的にハイグレードビルや大手デベロッパーが所有、管理するビルはスーパーゼネコンが指定業者となることがあり退去費用が高くなります。
また、原状回復工事の費用(退去費用)は慢性的な人手不足、新型コロナウイルス(テレワークの一般化)によるオフィス移転の流れがあるため、相場として上昇傾向です。
住居用に準ずるときの退去費用平均
賃貸借契約書の内容によりますが、SOHOなど場合は住居用に準ずることが多く、使用状況により退去費用が変化します。
事業用の場合、通常損耗は入居者の負担とされることが多いのですが、スモールオフィスの場合、通常損耗を建物オーナーが負担することもあり、退去費用が一律ではありません。どこまでが入居者の負担になるかは、賃貸借契約書、または特約に記載してありますので、確認するようにしましょう。
住居用であれば「退去時はハウスクリーニングのみ、通常損耗は建物オーナー負担」と賃貸借契約書に記載されており、壁紙の貼り替えなどが必要ない状態である場合の退去費用平均は下記のとおりです。
面積 | 平均金額 |
10坪未満 | 20,000円 |
10~20坪未満 | 40,000円 |
20坪以上 | 50,000円~ |
※業者や地域により価格差があり、季節により変動します(引越の多い時期は高く、閑散期は安くなります)。また、浴室を倉庫にしている場合、クリーニング費用が高くなることもあります。
工事内容別の平均費用と相場
通常損耗(入居していなくても発生する損耗+通常の使用状態での損耗)が入居者の負担である場合や、特別損耗(入居者の故意・過失・注意義務違反・通常の使用を超えるような使用による損耗)があり工事が必要になった場合は、該当する内容が退去費用に加算されます。
工事内容 | 平均金額 |
壁紙の貼り替え | 1㎡あたり1,000円(壁紙のグレードにより変動) |
壁のボードの取り替え(壁紙の貼り替えも必要になります) | 45,000円 |
フローリング張り替え | 10,000円(1枚) 1枚だけ張り替えると、色が浮いてしまうため、全面の張り替えが必要になることが多いので注意が必要です。 |
※いずれの場合も材料のグレード、業者、地域によって変動します。
5年、10年と入居していると、退去費用が低下する
特に住居用に準ずるオフィスの場合、5年、10年と入居していると、通常損耗の割合が高くなることから、建物オーナーの退去工事費用の負担割合が高くなり入居者の負担割合が低下します。但し、住居用でも法人契約にすることで、事業用の原状回復に準ずる復旧(床・壁・天井など)が必要となり、費用増加の要因となります。
事業用の場合、原状回復工事の内容が賃貸借契約により変わるため、5年、10年と入居しているから、退去費用が低下するとはいえませんので、ご注意ください。
退去費用を低減させるポイント
- 入居前に賃貸借契約書で退去時に必要となる原状回復の範囲、内容を明確にしておく。
- 入居中に水漏れ、空調装置、トイレの故障、床の軋みなどがあった場合は、即座に建物オーナー(貸主)に連絡し、必要な処置を行う。管理会社の対応遅延がよくあるので、その場合は書面で管理会社ならびに貸主へ通知すると対処も早くなるケースがあります。
- 原状回復工事の見積もりを依頼する際は、早めに行動し余裕をもって交渉、工事ができるようにする。解約予告通知後から一カ月以内を目途にするとよい。
- 原状回復工事の区分(A工事、B工事、C工事)を把握し、ビル指定の業者による工事範囲を精査する。
- 退去に伴い発生するゴミ(不要になった机や椅子、他什器など)のうち、所有権が入居者にあるものは、原状回復工事に含むのか、含まずに別に処分するのか検討する。ビル指定業者では残置する什器は買取せず廃棄とするので、入居者で手配した業者へ買取可能か相談する。何と言っても、退去費用を低減させるには、入居時の契約内容が最も大切です。退去費用のトラブル防止にもつながります。
住居用に準ずる場合、費用を払わないで退去する可能性が高まります。放置していた結果、原状回復工事の内容が多くなり退去費用が高くなることがあります。
事業用物件で退去費用を削減する方法
事業用物件の場合、どこまで原状回復工事を行うか、費用負担の区分(工事区分)はどこか、一般的な市場価格と比較し適切か、見積もりに記載された工事内容が適切かなどを確認し明確にすることで、退去費用を削減することが可能です。
このため、見積もりの内容をしっかりと把握し適切な金額(相場の金額)であることを確認することが大切になります。
特にB工事(ビルオーナー指定の工事業者)の割合が多い場合は、市場原理が働かないこともあり、退去費用が高額になってしまいます。
正直申し上げると、企業担当者が原状回復工事内容を把握し、適切な価格に交渉し退去費用を削減するのは、非常に困難です。削減できたとしても少額にとどまるでしょう。何事もその道の専門家に相談するのが最善です。
完全成果報酬型のコンサルティング会社であるJLAに削減を依頼し、退去費用(原状回復工事費用)が高くなる大手デベロッパーの物件でも、かなりの金額を削減できた事例もあります。ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。