賃貸オフィス・店舗の入居者が知っておくべき建築工事と原状回復工事
賃貸オフィス物件に入居するときの入居工事、内装リフォーム工事、物件から退去する際に必要となる原状回復工事は建設工事です。
建設工事についての知識を得ておくことで、自社交渉で工費削減にも繋がります。
また、2020年4月の民法改正は賃貸借契約、工事請負契約にも影響しています。
賃貸オフィスの入居者が知っていると得する情報についてお伝えいたしますので、最後までお読みいただけますと幸いです。
建設工事の種類(許認可)は2種類の一式工事と27種類の専門工事に分けられる
まず、2種類の一式工事とは建築一式工事と土木一式工事のことです。オフィスの工事は建築一式工事が該当します。
元請け業者が取得している許可が一式工事で、専門工事の許可を受けている業者にそれぞれの工事を発注します。
オフィスの規模や賃貸借契約・特約の内容によっても異なりますが、建設一式工事の許可を得ている元請け業者に、入居工事や原状回復工事を依頼するのが一般的です。
また、見積書や単価表なども工事の種類別に記載されていますので、原状回復費用や入居工事費用を削減したいのでしたら、知っておいて損はありません。
27種の専門工事で原状回復工事や内装工事に関係する代表的なものを下記に掲載しました。
- 電気工事(配電工事など:電話やネットの工事は含まれません)
- 電気通信工事(電話やネット回線の工事)
- 管工事(空調や給排水の工事)
- ガラス工事(店舗フロントガラス取り付け工事やガラス取り替え工事など)
- 建具工事(冊子など窓枠、シャッター、自動ドアを含むドアなどの取り付け工事)
- 内装仕上工事(インテリア工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、天井仕上工事、床仕上工事、防音工事など)
- 左官工事(モルタルや漆喰などを吹き付け、こて塗り、貼り付ける工事:内装の表面仕上げなど)
- 塗装工事
- 消防施設工事(スプリンクラー、屋内消火栓設置工事など)
- 解体工事
なお、1つの業者が複数の許可を取得していることもあります。
民法改正による請負契約の変化
原状回復工事であっても業者と契約をして工事を行ってもらいますので、請負契約をすることになります。
2020年4月の民法改正により、請負契約の内容が一部変更になっていますのでご注意ください。
例えば、何らかの理由で工事が完了できなかったときでも請負人(工事業者)から完成した部分についての報酬を請求する権利が明文化されました。また、旧民法では「瑕疵担保責任」だったものが「契約不適合責任」に変わっています。
旧民法下で使用した契約書と同じ内容で契約することは好ましくありません。民法改正に対応した契約書での契約をするようにしましょう。
契約時は業者の許認可を調べておくこと
契約時は必要な許認可を得ているか、見積書や会社のパンフレットなどで確認するようにしましょう。
また、原状回復工事の際は建設工事の許可だけではなく、廃棄物は産業廃棄物として処分する必要がありますので、産廃運搬や処理の許認可も確認する必要があります。
もし、曖昧な確認であったために不法投棄されてしまうと廃棄物を出した入居者(排出事業者)にも罰則などが科せられることがあります。ご注意ください。
建設工事の単価表と内容
工事の見積書には、工事の内訳と単価が掲載されています。
適切な単価なのかを判断する方法として、公共施設の標準単価を参考にする、公開されている施工業者の単価表を参考にする、相見積もりを取得して比較する、工事全体の金額を査定してもらうなどがあります。
下記の点に注意して、工事金額が高すぎないか確認するようにしましょう。
- 国土交通省や地方自治体では公共施設の標準単価を定めて公表していますので、同じ工事であれば参考になるかもしれません。ただし仕様が異なれば単価も異なってきます。
- 施工業者の単価表は、地域による価格差を考慮しておく必要があります。
- 相見積もりの場合は、工事内容に抜けがないか確認する必要があります。
トラブル防止のため、原状回復のガイドラインや工事範囲・期間について要確認
原状回復のトラブルに工事範囲や工事期間があります。
どこまで工事範囲なのかを工事前に工事業者、管理会社(ビルオーナー)、入居者で確認するようにしましょう。
また工事が退去予定日までに確実に完了できること、もし予定よりもオーバーしてしまった場合の処理についても事前に確認し書面に残しておくようにしましょう。
なお、賃貸オフィス・店舗物件の場合、原状回復のガイドラインは適応されないことが一般的です。
原状回復工事や内装工事の勘定科目
原状回復工事・内装工事の会計処理についても確認しておきましょう。
原状回復工事は「修繕費」と「固定資産償却損」
原状回復工事費用は「修繕費」として計上するケースがあります。
敷金から原状回復費用が差し引かれる場合は、借方に修繕費、貸方に敷金(差入保証金)とするのが一般的です。
廃棄処分した固定資産(償却資産)は「固定資産償却損」で処理します。
なお、税務調査で提示を求められることもありますので、廃棄証明書は必ず廃棄業者から発行してもらい保管するようにしましょう。
内装工事は「建物」「建物付属設備」+「備品」など
まず、椅子やテーブル、PCなど内装工事(造作)と分けられるものは「備品」などで処理します。
次に電気設備(照明含む)や空調など建物付属設備に該当するものを「建物付属設備」とし、それ以外のものを「建物」として処理します。
実際には、造作をまとめて一つの資産として償却する必要があるので、個別の耐用年数を加重平均して見積もるなど様々な処理が必要です。
ケースバイケースになりますので、顧問税理士に相談するなど適切な会計処理を行いましょう。
自社交渉での費用削減は厳しい
原状回復工事などの建設工事は専門用語が多く一般の方には難解です。費用削減の交渉を自社だけで行うのは得策ではありません。
株式会社JLAでは、原状回復工事(B工事)の査定・代理交渉などを承っております。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。