オフィス・店舗の原状回復が高い理由
オフィスや店舗の移転や閉鎖で必要な原状回復の見積金額を見て、保証金(敷金)よりも高すぎると驚いてしまう方がいてもおかしくありません。
保証金の中で原状回復ができるから払わなくてもよい、敷金が戻ってくるからと期待していたのに、戻ってこないどころか、追加で費用が発生してしまうのですから、驚くのも無理はありません。
ガイドラインに準拠する民間住宅の原状回復と異なり、オフィス・店舗の原状回復は様々な理由で高額になりやすい傾向があります。
原状回復が高くなってしまう理由と、削減方法についてお伝えしますので、オフィス移転の際にご参考にしてください。
同じ面積でも居住用よりオフィスの原状回復は高くなる
まず、オフィスやテナント物件と居住用物件の原状回復は、同じ言葉でも大きく意味や内容が異なりますから、ここで確認しておきましょう。
一般的な居住用物件の場合、原状回復は下記のように行われます。
- 使用状況が予測でき経年劣化(自然損耗)を家賃に反映させることができるため、経年劣化(自然損耗)の部分はビルオーナーの負担で原状回復を行う。
- 入居者のタバコによる壁や天井のヤニ汚れや汚れを放置したことによる壁のシミなど、入居者の不注意による損耗は入居者の負担で原状回復を行うが、経年劣化(自然損耗)の部分はビルオーナーの負担となる。
- 退去後に原状回復し費用を敷金から差し引き精算が一般的。
一方、オフィスやテナント物件の原状回復は、一般的に下記のようになります。
- 原状回復の範囲などは、賃貸借契約書や特約に明記され入居時点の状態に戻すのが一般的。
- 入居時点の状態に戻す工事を退去日までに行う。
このように、オフィスや店舗の原状回復は入居した時点の状態に戻すため、居住用賃貸物件の原状回復費用よりも高くなるのが一般的です。
どこまで戻すのか、どこまで工事するのか、どのように仕上げるのか、原状回復の金額が大きく変わる要因ですから、賃貸借契約書や特約をしっかりと確認するようにしましょう。
相場はあってないようなもの
原状回復の相場は坪あたり3万円~20万円と大きく差があります。
小規模オフィスは安め、大規模オフィスやハイグレードビルは高めになる傾向がありますが、物件による金額差が大きいため相場はあるけど、あまり参考にならないのが実情です。
原状回復が高い理由:指定業者
多くのオフィス・テナント物件は、建物の価値を低下させない、他入居中の会社・テナントに対して影響を与えないなどの理由で、原状回復や内装工事ができる業者が指定されています。
業者が指定されていますから、競争原理は働かず費用が高くなってしまいます。
高いからと言って、他の業者に変更できないか交渉するケースがありますが、下記のようなトラブルが発生しています。
- 退去の確認をしたときに仕上げ状態に問題を指摘され、再工事となり退去日までの退去ができず、違約金や工事費などの余分な費用負担が生じた。
- 工事可能日や養生方法などが指定され、当初の見積もり金額をオーバーしてしまい、結果的に高い回復費用になった。
- 見積もりに必要な工事が入っていなかった。逆に不要な工事が入っていた。
トラブルを考えると原状回復費用が高いからといって、安易に他の業者に依頼することは避けた方が良いでしょう。
提出された見積書の内訳を確認して、適正な金額になるように交渉するべきです。
重層構造による工事請負による高額化
大手デベロッパー物件の場合は、ほぼ確実に発生するのが重層構造による費用の高騰です。
原状回復に限らず、指定業者がトップになり、一次下請け、二次下請け、三次下請けと重層構造になるのが建設業界の一般常識です。
階層構造が増えれば増えるほど中間マージンが増え費用が高くなりますが、工事ルールの統一化、仕上がりの均一化などのメリットが享受できます。
また、物件によっては工事業者から管理会社やオーナーへバックすることもあります。
入居時の状態に戻す工事内容が、そもそも高い
入居時点の状態に戻すために大掛かりな工事が必要になってしまうと、原状回復費用が高くなってしまいます。
給排水設備工事が必要
飲食店やモデルルーム、研究室など、給排水設備を設けていた場合、設備を撤去する必要があります。
物件によっては、ビル全体の水道を止める必要が発生することがあるため原状回復費用が高くなりがちです。
一般的ではない内装がある
クリニックでレントゲン室を設置していた場合、専門的な工事や廃棄処分が必要になるため高くなります。
また、大型の換気扇や暖炉、シャンデリアの設置、防音室など、特殊な内装になっていると、工事費用が嵩みます。
入居時にあった壁や設備を撤去した
入居時に設置してあった壁や設備を撤去しているケースがたまにあります。
オフィスや店舗の原状回復は入居時点の状態に戻すことですから、撤去した壁や設備も復旧する必要があります。
入居工事の記録や契約書の内容もあいまいであるがために、壁を撤去していたことに気が付かず、工事完了後に管理会社に指摘され、よくよく調べてみたら、入居1年後に内装工事を行って既存の壁を撤去していたことがわかった。
このようなケースは再工事となってしまい余分な費用が発生します。
念には念を入れて、確認するようにしましょう。
削減するには適切な費用を算出するしかないのか?
高すぎる原状回復費用を削減するには、工事業者から出された見積書の内容と金額が適切なものか確認し交渉する必要があります。
確認するには、相見積もりを取得する、自分たちで材料費、作業量などを算出するなどの方法がありますが、参考程度に留まってしまいます。
交渉で削減を実現するには、現在の材料費や工事費の市場価格に鑑み、建物に応じ算出した金額で交渉しなければなりませんが、ハードルが高いため多くの企業様は高い原状回復費用を支払っているのが現状です。
JLAでは完全成果報酬で原状回復工事の適正査定を行い減額交渉まで行うコンサルティングを行っています。 原状回復が高すぎるとお感じでしたら、お気軽にご相談いただければ幸いです。